耕養庵蒼島短歌 (第五回) 平成十七年 春季
背戸川の水音はげしく聞え来ぬ深山の雪の水と変りて | 大崎常子 |
見上ぐれば春の綿雲生れいでてその空にあり白き木蓮 | 大崎常子 |
訪ひ来れば菅湖の葦芽伸び出でて波音は春の写景なしおり | 大崎常子 |
店先でつめたさたへて客を待つくずの万十初夏の訪れ | 山崎武 |
若狭井に流れゆく水早春の若狭を出でて春は来にけり | 小堂智恵子 |
蝋梅の花こんじきにほほえみて後瀬のやまの古刹の庭に | 谷川ハルエ |
老いたりて足元たしかでないけれどまだ見に若狭路夫婦で行きたし | 中川文男 |
晩冬に姉と訪ねし庭園に若葉の揺れて夕暮れてゆく | 森口かな江 |
この町に住みて幾月釣船の浮かびし海に春の風吹く | 森口かな江 |
水清き熊川宿を愛しめり昔を今に守り給える | 矢野嘉子 |
子へ孫へ継ぎし家系をいつくしみ熊川宿を今に称えむ | 矢野嘉子 |
川沿ひの宿場街道燕来る去年の古巣を又のぞきをり | 矢野嘉子 |
たのしみはゆったり風呂に温まり布団の中にもぐり入る時 | 多田蘭 |
桜木の幹に芽吹きし幼木に咲く花一輪色の清しく | 杉崎康代 |
花筏となりて流るる桜花小踊りしつつ川沿ひをゆく | 谷口正枝 |
遊学の少年仏前に掌を合はせ頭深々下げて発ちたり | 佐野鈴子 |
一面にあたり明るしたんぽゝの黄金まばゆき畑の道に | 西尾道子 |
朝光に白く耀ふ木蓮の白鳩のごと中空に浮く | 地村伊代 |
ゆくりなく足萎へし友と店に逢ひ慰め合ひつゝカート押しゆく | 村松恵美子 |
お茶席にまみゆる菓子の紅白は舌ざわり良く緑茶に溶けし | 藤井敏子 |
夕焼の心安らぐ若狭富士若狭路の名物ヘシコ知れ渡り | 吉田万寿 |
若狭なる御食国のながし葛はだのやさしさ母の胸かな | 山口明子 |
いきいきと青き血潮の鯖のすしいにしえ人も舌づつみかな | 山口明子 |
桜散り少しさみしくなったからここはお一つおいしいお菓子を | 中西清崇 |
さくら咲き春を感じうれしいなさくらもち食べてお花見したいな | 山本春奈 |
満開の桜の下でゴザを敷き抹茶アイスをほおばる私 | 吉本有里 |
月みちて桜まんかい夜の空たなびく風にくずまんじゅう | 角谷志穂 |
桜まいみたらしだんごほうばってのどにつまらせあわててお茶のむ | 角谷志穂 |
日がしずみ昼とはちがう夜の景色夜桜みながら団子ほうばる | 鯛釣麻美 |
春の空さくらの下で桜もちこのひとときがいやしのときかな | 一瀬一輝 |
桜咲く雪溶け水に蝶が舞い桜もち食べ心が踊る | 岩本けん |
卒業後口に頬張る桜もち新たな時に気持ちが騒ぐ | 岩本けん |
桜さく過去の思いで思いだす桜もち食べ記憶忘れさる | 上田桂一 |
卒業式旅立ちの日に夜桜で達とかわした春の約束 | 上田桂一 |
雪溶けの水にまじった桜の葉ひろってあつめるまごの赤い手 | 中橋勇介 |
新学期むねはずませて教室に友達できるか心配だなあ | 大矢晴香 |
金ヶ崎桜を見ながら食べようよみんなで楽しくお花見だんご | 松永あかね |
桜咲きなぜか思う花見だんご今も変わらぬ三色の色 | 別所いずみ |
春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に三色だんご | 酒井領也 |
美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・