耕養庵蒼島短歌 平成二十三年十二月分 入選作品
「本土発つ心配無用」父よりの助詞なき便り遺書となりたり
小浜市飯盛 古谷 擴子
寸 評
作者は六十数年の間、父よりの遺書となったはがきを、お守りのように大切にしているのです。
「助詞なき便り」にその時の切羽詰まった気持ちを察することが出来ます。貴重な歌です。
廃線のレールはもはや光らず枕木の間にひめぢょをん咲く
小浜市青井 竹村 祐美子
寸 評
「ひめぢょをん」は荒地に咲く雑草です。
使用廃止となった線路は赤錆となっていることでしょう。
枕木の間にひめぢょをんの白花がわが世と許り咲いている如何にも荒廃感がよく詠まれています。
山影の延びくる土手でポケットにどんぐり転がし下校の児ら待つ
小浜市三分一 小畑 志津子
寸 評
「ポケットにどんぐり転がし」で歌が決まりました。
作者の置かれている位置「山影の延び来る土手」牧歌的素朴で情感があります。
稲作ること許されず休耕に伸びし田の草今日も刈りおり
若狭町下吉田 奥本 守
寸 評
政府の政策には逆らへず農民の歎きが四・五句に詠まれています。
美田を保っていた穀倉地帯が休耕のため草原から原野になっていくのを見るのは悲しいことです。
今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。
美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・