耕養庵蒼島短歌 平成二十三年十月分 入選作品



水底の幼魚と眼の合ふ郷の河夭折の兄ぞ菓子流し遣る

                                                       小浜市湯岡 寳積寺  葦舟

寸  評

終わりに―盆―とことば書きがありました。作者は、
お盆になると幼くして逝った兄のことが思い出されるのでしょう。
菓子流しやるに沁沁とした思いがあります。身内ならではの歌です。



若狭富士赤礁原子炉すぐそこに友と語らひ入江をめぐる

                                                          若狭町仮屋  鹿野 公夫 

寸  評

いい所を観光されましたね。
名所旧跡風光明媚この地に住んでいてもまだまだ見知らぬ所がいっぱいあります。
まして若狭は観光都市です。この歌を読み、
私も是非行ってみたいと思いました




花一束供えてありし駐車場そこのみ深しん静まりてをり

                                                   小浜市三分一  小畑 志津子                     

寸  評

この場所で交通事故があったのが、誰か亡くなられたのかと想像します。
そして思わず掌を合わせます。供花が一束あったというそれで沁沁とした歌になりました。
この駐車場は永遠に祈りの場所となりましたね。





川岸に萩の小枝を揺らしつつ流るる川面にむらさきの花

                                                    小浜市和多田  宇多 蔚乃


寸  評


作者は自然をこよなく愛し自然を見つめ美しく読み上げられました。
何事もなく見過ごしやすい川の流れも良く見つめるとこんな風情がありおもむきが目に止まります。
自然を愛する人は心の優しい方です。





真昼間のわが畑に舞ふ黄の蝶はいつしか並び東にいけり

                                                          小浜市湊   藤田 幸子 

寸  評

ま昼間の畑に蝶が舞ふ物音一つしないま昼間そこに黄の蝶が二つ、
それだけでこの歌情感の深い歌となりました。
二つ並んで東の方に行ったその後のことは読者をいろいろと楽しく想像させてくれます。いい歌ですね。




今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・