耕養庵蒼島短歌 平成二十三年二月 入選作品
朽木道は背丈の嵩に雪の壁京へ続ける白き回廊
小浜市飯盛 谷口 正枝
寸評
今年は大雪に見舞われ戸惑いました。
雪中に京へ行かれた時の歌でしょう。
下句の「京へ続ける白き回廊」で大雪の様子が読み込まれています。
積もりたる雪は音を吸ひ込みて人住まぬごと里の静もる
小浜市飯盛 多田 蘭
寸評
これも雪の日の歌。
雪の日は物音一つしない中に一日暮れますね。
村中がシーンとしていた処を「人住まぬごと」と、うまく表現しました。
新刊書求めて戻る老いて猶少女のごときときめきのあり
小浜市加斗 西尾 道子
寸評
この歌からは、作者の老いなど全然感じられません。
老いは年齢ではなく感受性の豊かさによるものと思います。
少女のごときときめきをいつまでも持ち続けてください。
終電の乗客まばらに俯ける若き二人はメール打ち合ふ
小浜市生守 佐野 鈴子
寸評
乗客のまばらな中に二人の若者がいる。
読書してゐる作者は殆ど見かけることはない。
現代の若者の様子を下句によく表現している。
毛筆のおさらい幾枚持ち帰る紙も幼も墨の香抱く
小浜市飯盛 古谷 擴子
寸評
習字の塾より戻ってきたのでしょうか。
ほのかに墨の匂いのする幼を作者は嗅覚で捉えて詠まれました。
墨の香抱くが新鮮です。
今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。
美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・