耕養庵蒼島短歌 平成二十二年四月分 入選作品
第一席
頭下げお世話かけたと長の子は言葉少なに退職を告ぐ
永田 きみ子
寸 評
「お母さん長い間お世話かけました。この春退職します」と母上に報告する長男。
今の世相に珍しく礼儀正しいお子様と感服します。お幸せなご家庭が想像されます。
第二席
奈良駅にキャラクターのセント君鹿を装いわれらを迎ふ
各務 孝子
寸 評
奈良の駅に降りたとき「ようこそ」と出迎えてくれたのはキャラクターのセント君だった。
しかも鹿の装いだった。さすが奈良ならではの思考と思います。
セント君も遷都(都を他の地に移す)とかけて呼び名としたのもおもしろい。
第三席
夜を明かし踊る八尾の風の盆路地に散りゆく胡弓も従きて
塩谷 トミ子
寸 評
胡弓に合わせて夜通し踊るという八尾の風の盆広場で一斉に踊った群が路地に入っていく。
胡弓の音が耳元に聞こえて来るようです。この歌を読むと一度いってみたくなるのは
私限りではないと思います。
手の平に切りゐる豆腐すべり落つふわりと浮き来る朝の味噌汁
宇多 蔚乃
朝の台所の何気ない風景ですがおいしい匂いが漂ってくるようです。
青竹の節に細かき粉ふきて風に振れ合ふ音のかそけく
佐野 鈴子
小暗い藪の中に節節におく白き粉をみつけ作者は一点の光明を見つけた思いだったと思います。
竹と竹の触れ合ふ音は何とも情感の深いものです。
今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。
美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・