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絵本「ふるさとの絵ばなし」より

千石畑(せんごくばたけ)


〈ふるさと昔話〉



むかし、
奥田縄村(小浜市奥田縄)の長者に二人の娘がありました。


あね娘の母親はなくなり、
いもうと娘は今の母親の子でした。


 母親はまま子が気に入らないので、
いつもいじめてばかりいました。


 ある日のこと、
「うら山の畑に豆をまいておいで」と、
母親は二人の娘に袋に入れた豆を渡しました。


 自分の娘には生の豆を、
まま子にはいり豆の袋を渡し、
「芽を出さなかったら、この家から追い出すからね」
といいました。


 「とうとう、この家から追い出されるときがきたのか」と、
あね娘は悲しくなりましたが、
いっしょうけんめい豆をまきました。




 いく日かたち、
母親が畑に行くと、
あね娘がまいた豆から芽が出ていました。
 「豆の袋をとりちがえたにちがいない」と、
母親は腹を立てて、
あね娘を追い出してしまいました。




 あね娘はその畑に立って泣きました。
涙が豆の芽に落ちると、
どんどん大きくなり、
その畑からは千石もの豆がとれました。





 それから村人たちはこの畑を
千石畑と呼ぶようになったということです。
               




                   若狭文学会会員    四方吉郎



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