象と若狭路博
六百年の時空を超えて、象が小浜の街を歩きました。
象は鎖に繋がれるでもなく、ひとりの調教師が、
手鉤を持ってその背に乗っただけでした。
象の周りを遮るものは何一つありませんでした。
にもかかわらず、人々は怖がることなく、
往く道に群がったのでした。
あの日、そうです
一四〇八年六月二二日の阿納尻村古津に着いた象
の場合も、同じだったのではないでしょうか。
南蛮船こそ渡来しなかったものの、小浜線の電化、舞
鶴若狭自動車道の延長という、先端をいく文明がやって
きて、象が歩くという催しに繋がったのでした。
二〇〇三年九月一四日、
小浜の海会場を中心に若狭路博が開催されました。
放生祭がオープニングの日に合わされ、
小浜全二三区の出し物が演じられました。
山車九基、大太鼓五基、神楽四基、獅子四基、御輿一基が、
一同に集結した様は、
七九年振りといわれる前評判どおりの壮観なものでした。
一ヶ月の期間中の来訪者は、四三万人でした。
この若狭路博のイベントの一環として、
象の行進の再現がありました。
若狭小浜は、生きた象が、初めて日本に上陸した街です。
そして、この象がどの道を通って京の都につれられたかは、謎のままです。
鈴木 治
美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・