小浜は、日本ではじめて象が来た町です。
それは一四〇八年(応永一五年)六月のことでした。
南蛮船に乗って、今の甲ヶ崎の浜へ上陸したようです。
それを記録したのが
「若狭国税所(さいしょ)今富名領主代々次第」という文書で、
これが原典です。
この文書では、上陸した象を「生象一疋。黒。」と記録しています。
六〇〇年前の日本で、生きた象を見るのが初めてのことで、
わざわざ「生象」と記録したのです。
本物の象を見た人は、みんなひどく驚いたことでしょう。
しかもこの象は黒色であったと注釈をつけています。
実は、当時の人は象は白色だと思っていたのです。
それはなぜかというと、
仏教絵画では普賢菩薩や帝釈天はいつも白い象に乗っていたからです。
ときたま現れる白象は神聖視され、お釈迦さまの生誕説話でも、
摩耶夫人は白象が体内に入る夢を見て、お釈迦さまを身ごもったとされています。
上陸した象は室町幕府の将軍義持への献上品として、
京都へ運ばれて行きました。
その象は、その後はどうなったのでしょう。
四方吉郎
美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・