耕養庵蒼島短歌 (第七回) 平成十七年 秋季

但馬路を未明に出てて若狭路へ盛夏の雲にて暑さ忘るる 松本 利明
若狭路のひざの痛みをとる甘露(宝)くじもはずれてコーヒーと飲む 後藤 良雄
清流というのは人の行いのすぐれたる人の胸中の正 後藤 良雄
比丘尼洞抱きて眠れる後瀬山紅葉色づく若狭路の里 吹田 てつ枝
海の蒼紺碧の空広ごりてひと日若狭の仏巡れり 四方 格
三方湖に色づき始むる山並の楓うつせる穏けき真昼 地村 伊代
季すぎて枯葉の見へし西瓜蔓女花いくつか生き生き咲ける 地村 伊代
寺庭のおぐらき中に秋の薔薇小さき一輪夕日に向ふ 杉崎 康代
明通寺の杉の木立の明るみて夕茜刷くが木の間に見ゆる 杉崎 康代
雨降りの通勤電車を降りし駅傘一斉に開きて華やぐ 佐野 鈴子
風も無く日和続きし峡の里野焼きの煙幾筋も立つ 古谷 擴子
歌集にみるお顔も声も知らぬ人何故かやさしき温もり感ず 古谷 擴子
白波の立ち越し浜の白暮れどき冷めたき風に犬と晒る 西尾 道子
千人針結びたる日もはるかなり木綿の赤糸出て来て思ふ 池田 和栄
葛ようかんありて命支へらる食の進まぬ昼餉にいただく(病みて知る) 池田 和栄
ハイツより井上カシヤしたつづみ 田中 稔
秋がキテまんじゅうたべてしたつづみ 田中 稔
秋だよ赤く染まった紅葉たちはらはらと舞うはらはらと散る 角谷 志穂
日がしずみ夜が近づき寒くなり家に帰ってもぐるこたつ 鯛釣 麻美
秋の空紅葉のように赤い夕日寒さを感じ冬が近づく 鯛釣 麻美
前夜祭準備が終わり疲れ果てそれでも明日から気合い入れるぞ 中西 清崇
学校祭だるいと思えばだるいけどやりはじめるとがんばれた俺達 宮武 明
ロールケーキ難しいけどおいしかった機会があったら作りたいな 浅田 友美子
学校祭バンドを見てたらいろいろな曲が流れた感動しきり 浅田 友美子
ケーキはねとても楽しい勉強だ私の未来は楽しいパティシエ 岩井 咲子
学校祭楽しい時間は過ぎ去って残っているのは期末テスト 窪田 晃子
夏が過ぎ早くも秋がやってきたと思ってたら冬になった 芝崎 瑞希
一年中休まず続けるマラソンを自分の未来につなげたらなぁ 清水 珠未
朝起きて身を震わせて用意して毎日2時間遠い若狭路 清水 珠未
学校祭オープン完売一時間それほどおいしい我らがケーキ 大口 晃未
ようかんが食べたいと思うコタツの中冬の小浜はやっぱりでっち 田井 奈月
学校で今年も受けたよ漢字検定毎日結果が待ちどおしいよ 田井 奈月
冬祭りお菓子作りと友達の和心浮かれた二日間の学び 寺井 侑子
変わりゆく季節に心舞い上がるまちのネオンははやクリスマス 水谷 優奈
秋空にカラス一匹カーカーと秋を感じるひとときかな 山本 春奈
秋の風冷え行く心吹き抜けて時間が長く感じて行くよ 一瀬 一輝
外出たら空気おいしい秋の夜星が見えるよ散歩に行こう 松永 あかね
柿の木がたくさんの実をつけている秋の風にゆられて落ちる 谷田 真奈美
三年間あっという間に過ぎて行く後もう少しでお別れですね 谷田 真奈美
コンビニのみたらし団子おいしそうついつい手がのびお買いあげ 江口 悦子
学校祭時間をかけて準備をしけれど終わればあっと言う間 小山 晶子
北陸の冬は厳しい泣きそうだそれでもがんばるスカートの私 小山 晶子
もうすぐで高校終わり就職へ学んだことを生かしがんばる 吉本 有里
学校の窓から見える夕暮れよ日に日に暗く冬訪れかな 吉本 有里
鏡餅くだいてかけらをひなあられ今から来年待ち遠しい冬 鯛釣 麻美
空から降る雪の結晶きれいだねキラキラキラキラ舞ながら降る 中橋 勇介
昼休み弁当食べすぎ腹いっぱい午後の実習おかわりできず 中橋 勇介
やることのないヒマ人はロッカーで昨日は昼寝今日は何しよう? 日置 和子
辛いときみんなが側にいてくれるこんな私の学校生活 古川 聖也
夏終わり時間がすぐに過ぎて行く毎日同じことの繰り返し 古川 聖也
学校祭ワクワクドキドキしたけれど最後はやっぱり笑いでしめる 松永 あかね
空高く手をのばせば風つめたく木がバサバサと大きく揺れる 松永 あかね
冬深まり寒さが心に身にしみて暗くなるので駅まで早足 江口 悦子
バザーしてお金をためて募金して役に立てればうれしいかな 江口 悦子
秋終わり冬が到来北風が勢い強めて襲いかかるかな 大矢 晴香
家の中凍える日にはみかん食べコタツに入るのが一番だよ 一瀬 一輝
雪降って雪が積もったら友達呼び外で遊んで大はしゃぎする 一瀬 一輝
十時間生徒と一緒にハロウィンのディズニーランドで疲れ果てた 上田 桂一
空高くわれを連れ行くエスカレーター小春日和の恐怖のお台場 上田 桂一
JFK金本・赤星・下柳来年もまた楽しませてなぁ 高野 真佐子
すすき野に染み入る光望月の幾年月も想いぞ絶えぬ 高野 真佐子
朱々と夜明けの光に照る紅葉はかなき命秋ぞ深むる 齋藤 育生
学校祭の一致団結がんばったマンガ喫茶と人気のケーキ 齋藤 育生


耕養庵蒼島短歌 (第七回) 平成十七年秋季 入選作品



第一席

 海の蒼紺碧の空広ごりてひと日若狭の仏巡れり

                                   京都府綾部 四方 格

  寸評

   「海の蒼紺碧の空」若狭路の美しさを短的に捉えられました。「若狭の仏巡れり」
  若狭は神社仏閣の名刹が多く、一日観光されました作者は、内海より臨む水平線、
  凪ぐ海に逆さに映る山々などもご覧になられたと思います。歌全体から叙情が伝わ
ってきます。





第二席

風の無く日和続きし峽の里野焼きの煙幾筋も立つ

                                 飯盛 古谷 擴子

  寸評

   牧歌的な長閑な田園風景が広がって来ます。収穫を終えた田んぼの畦を焼いてい
  るのでしょうか。あっちでもこっちでも焼いているその煙を「幾筋も立つ」と表現
  した所に作者の感慨が伝わって来ます。






第三席

比丘尼洞抱きて眠れる後瀬山紅葉色づく若狭路の里

                              南川町 吹田 てつ枝

  寸評

   比丘尼洞は八百比丘尼の入場したと言われる洞窟のことです。
「比丘尼の洞」とのを入れると歌が滑らかに読めます。
結句は「若狭の里に」として路を取ってにを入れてみました。作者はよい所に着眼されました。
小浜に住む者としては詠んでおきたい歌です。






ジュニアの部

秋の風冷え行く心吹き抜けて時間が長く感じて行くよ

                                               青池クッキング  松永 あかね

  寸評

「秋風は」のを取ってはを入れます「冷えゆく心を」を入れます。
助詞を入れて詠むと言葉が窮屈にならずゆったりと詠むことが出来ます。
秋の風を「冷えゆく心」「時間が長く」と捉えた作者の感性に感心。
ここが作者の発見であり歌の優れた所です。



美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・