耕養庵蒼島短歌 平成二十三年十一月分 入選作品



今日ひと日晴れ渡りたる青き空一点のりもなきが哀しく

                                                       小浜市中井  信谷 冬木

寸  評

まっ青な空一つの翳りもない青さそれを哀しいと感ずる作者の感性は鋭いと思います。
余分なことは一つも言わず青い空に集中して詠まれたので情感が深くなりました。



空を仰ぎて稲掛けせし日々を語れば友も諾なひてをり

                                                          小浜市中井  大江 青流 

寸  評

昭和の中期までは星空を仰いで稲掛けをするのは珍しいことではなかった。
稲刈りから米になるまで総て機械で処理される時代に生きても、
稲掛けを懐かしむのは作者だけではないでしょう。
懐古の歌だがこの歌には切実感がある。




我が娘背負ひし帯に孫背負ふ三十五年の歳月経ちて

                                                   

小浜市大谷  中尾 和美

                     

寸  評

帯一本の歴史を言って歌になりました。
娘を背負った帯で孫産を背負う何とお仕合せな作者でしょう。
背中野孫産の息づかいがトントンと伝わり読者も幸せになります。





寝たきりの夫もつ友のまなざしにれても咲くコスモス浮かぶ

                                                    小浜市中井  古谷 尚子


寸  評


寝たきりの夫をもつ友は、いつも目裏に倒れていても時期が来れば咲くコスモスを思い浮かべて
パワーをもらっている。コスモスを浮かべては看とりに励んでいるのであろうと、友を思い友をねぎらう歌。
ひとときでも安らかでありますよう祈ります。





南天の葉も生き生きと重箱に赤飯届くあまく香りぬ

                                                          小浜市中井  山本 實 

寸  評

手紙が届く、宅急便が届く、届くものはみな嬉しいですね。
赤飯が届く、何とお目出たいことか、重箱が出てくるのも懐かしい。
重箱を開けて目に飛び込んできた感動を「南天の葉も生き生き」と、
その儘詠んだので歌が生き生きとして臨場感があります。




今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・