耕養庵蒼島短歌 平成二十三年九月分 入選作品



夜もすがらすだき通せしくつわ虫昼は窓辺に聖者の如く

                                                           山本 義道

寸  評

夜中鳴き通すくつわ虫がちゃがちゃとよく鳴きますよね。
そのくつわ虫が昼間はちょんと窓辺に動こうとしない。
その姿は、聖者の風格を持つと言った作者味わいがありますね。



老い松の折れむばかりに風荒れてテレビは九州の惨状を告ぐ

                                                          山本 敏子 

寸  評

台風を詠まれたのでしょうか。「折れむばかりに」ひどく荒れた様子がここでよくわかり
臨場感のある歌となりました。やはり歌には具象が必要ですね。





木通の実薄紫に変はりゆき木漏れ日差すが葉陰にみゆる

                                                        谷口 正枝                     

寸  評

近頃すっかり見なくなった木通の実、これを見つけた作者は
きっと宝物を見つけた思いと思います。すっかり紫色濃くなるまで見守ることでしょう。
四・五句に一途な姿が見えるようです。





ぎとともに人々集いきて釣り糸垂らす夏の突堤

                                                      青木 哲子


寸  評

なかなか臨場感があり、釣り人の様子が想像されます。
「夏の突堤」は歌全体の季節感を現しています。





団扇持ち火照る体の湯上がりは夜風にしばし髪をかさむ

                                                          辻 彌生  

寸  評

夏の湯上がりの様子ですね。「夜風にしばし髪を梳かさむ」で
この歌は決まりました。女ならではの歌ですね。




今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・