耕養庵蒼島短歌 平成二十三年三月分 入選作品




この山にて越冬するとふオオワシの嘴見ゆるその色は濃し

   小浜市和久里  岩本 和子



寸評

    なかなかこんな場面に遭遇するものではありません。

オオワシの爪や目を言うのではなく嘴を捉えた所に作者の発見があります。

併も嘴の「その色は濃し」でオオワシのいかつさを一層強くしています。




四世代の雛人形を飾らるる此の庄巻にしばし息のむ

小浜市雲浜  塩谷 トミ子 



寸評

    一軒の家に四世代の雛人形が飾られている。

これまた大変な貴重なものを見られました。

一代の物でも保存が大変なのに

四世代もの雛人形の保存と継承することは並大抵の苦労ではない。

息をのむ思いで眺めている作者の感動が伝わります。




止みし間に雪を除ければはこべらの瑞みずとせし緑目に沁む

小浜市下田   東 紀子  



寸秒

    雪除けをしていて、スコップの先にはこべがついて来たのでしょう。

一面真っ白な雪の中に青いはこべの緑が沁みます。

ハッとする瞬間を逃すことなく捉えています。




寒風に枯葉片寄る澄む池に緋鯉と稚鯉はよりそひ潜む

小浜市下田  小堂 裕子



寸秒

初句に寒風にとあり結句によりそひ潜むと、

結ばれてをり、よく筋の通った詠み方と思います。

また結句の「よりそひ潜む」に作者の鯉に対する暖かい目ざしを感じます。




山里は雪に埋もれて凍てし夜の如月の空にオリオン煌めく

小浜市和多田  芝 美代子 



寸評

    オリオン星座は冬の星座の内で最も美しい星座とされています。

凍てた夜にオリオン星座の煌めくのを見つめている作者。

この世の物とは思わない異次元の世界に身をおいている思いだったでしょう。



今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・