耕養庵蒼島短歌 平成二十二年十二月分 入選作品



馬居寺の観音菩薩は忿怒の相旅に倒れし人馬あわれみ
                                                            津田 條栄

寸  評

馬居寺の観音様におまいりされた時の歌でしょうか。
昔は旅に倒れた方もあったでしょう。そういった人馬を怒りの形相で観音様はお守りしている。
泌々と観音様を見上げている作者が浮かびます。



柿一つ高木の梢に残しあり自然の破壊進みし今も
                                                       多田 蘭

寸  評

道の造成に山や森、田んぼ迄あっという間に自然がこわされていく現代に
小鳥の冬越しのために柿一つ残しておく。優しい作者の心遣い、そこに着目した歌心うたれます。




河内のダム進まぬままの狭の村がんど橋のみ鉄筋なりて
                                                          杉崎 康代
                         

寸  評

河内のダムは未だに進みません。
国の政策とは言えしわ寄せが狭の村まで及んでいます。
そう言ったことを作者は憂う気持ち一首にみられます。
鉄筋工の橋に期待が持てますね。




海に伸ぶる岬の山は紅葉して潮に秋の彩うつす
                                                     古谷 擴子


寸  評

山の紅葉は美しいその岬の山の景が内海に映っている。想像するだに
絵はがきを見ている様です。まさに若狭路は風光明媚人の心を引かれます。





残したる渋柿ひとつ艶つやと小鳥がじっと見つめてゐたり
                                                          奥本 守 

寸  評

柿の木の高所に実が一つ残っている。秋日に照ってつややかに光っているのを
小鳥がみつめる静かな山村の風景、一幅の絵になりますね。




今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・