耕養庵蒼島短歌 平成二十二年八月分 入選作品



悲痛とも歓喜にもにも聞くの声を限りに鳴ける
                                                    谷口 正枝

寸  評

  数年も土の中にいて植物の根から養分を吸収して成虫になる蝉。
地上に出てからしばらくの命その間、声を限りに鳴く蝉を悲痛とも歓喜にもと、
捉えた作者の感受性の豊かさに敬服します。

わからず屋この石頭と言はれゐてかつて一家を支へたる父は
                                                     津田 條栄

寸  評

                       「石」と題詠の中での一首です。父を振り返ってみつめています。
石頭と詠まれていますが、誠実で正直な人柄のお父様が思われる。
ユーモアに詠まれています。

汗流るる今年の暑さ異常なり麦茶塩飴欠かさずに持つ
                                                    古谷 擴子

寸  評

 今年の猛暑続きには身の置きどころがありません。
さりげなく言ってその儘歌になりました。
水分、塩分補給でこの猛暑を乗り越えてください。

気に入りしレースののれん掛け終へて夏の準備の全てととのふ
                                                     多田 蘭 

寸  評

主婦でなくては詠めぬ歌「準備の全てととのふ」に冬物との入れ替え、
夏物の準備と一いち言わずにのれんの掛け替えだけを言った所に作者の力量があります。

松が枝の重なり落とす鋏の音夏陽の中にさはやかに冴ゆ
                                                     藤井 敏子

寸  評

庭を剪定する風景。
ま夏陽の中に鋏の音が「さはやかに冴ゆ」結局これで一首を決めました。



今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・