耕養庵蒼島短歌 平成二十二年六月分 入選作品




 

若狭路を友と巡りて岬山に何時しか夕日の沈む時なり
                                                    中川 文男

寸  評  

いい光景に出会われましたね。若狭路の夕陽の沈む景色は美しい。
大きい陽が沈む時、それは、おごそかといふ他ありません。


紅き花昌子に譲り泣く登美子芙蓉の花は庭に香れる
                                                     加地 弘忠

寸  評  

    山川登美子を思って詠まれた歌。芙蓉の花は美人のたとえに使います。
香りて哀しを「庭に香れる」としてみました。
一、二、三句は自分の思いを直叙されました。ありのまま詠まれたので歌が強くなりました。



しぐれゐる青戸の入江によりそいてうまし若狭の新わかめ取り
                                                      松崎 茂明

寸  評  

    絵に見る様な静かな風景です。
美し若狭をそのまま美し小浜と詠まれても近親感がもてます。


鳴き砂の若狭の浜を母と行く遠き日父と歩みたる浜
                                                       岸野 孝彦

寸  評  

四、五句「思ひ出こみ上げる春」を右の様に詠み替えてみました。
父との思い出なつかしい歌です。



み佛の里は時雨れて旅人のかそけき聲も夕闇に消ゆ
                                                      玉井 正幸

寸  評  
                        

    小浜は神社佛閣が多くほんとうにみ佛の里ですね。
一、二、三句は甘く詠まれて小浜ならではの情感があります。
夕闇に消えたのは、旅人の姿と思いましたので、「連れだつ姿」夕闇に消ゆといたしました。
深く心にしみ入る静かな歌です。


今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・