耕養庵蒼島短歌 平成二十二年五月分 入選作品




不覚にもこぼす涙を想ひけり桜の花のひとひらが散る
                                                     新谷 冬木

寸  評

                           桜の花のひとひらが見て一際の物は、生滅変化していく。人生のはかなさを思って、
思わず涙をこぼされた作者心象詠で、大変重い意味を持った歌。


在りし日に夫と語らひ歩みたる野道を一人歩みゐるなり
                                                      近者 綾子
                        

寸  評

    ご主人を思う懐古の歌ですが、しめっぽくならない所にこの歌のよさがあります。
四、五句に偲ぶとか、恋い慕うとか言わないでさらりと詠まれています。
上句に充分具象があるのでよく分かります。

吾の名を幼に問ふごと確かめて看護師やおら点滴始む
                                                       領家 公子
                    

寸  評

    この歌を読み何故か安心しますね。名前を幼児に問い糺す様に確かめてから、
点滴注射をしてくれた看護師に信頼感が湧いてきます。

寒暖の差の激しき春の日々作業のおくれ気にしつつをり
                                                       中積 和子

寸  評

今年の春は寒暖差のはげしい日々でした。
かつて農事に携わって来た作者は、農作業の遅れや、作物の成長に大変心配しています。
思いやりの深い歌です。

投げ入れを床に活けたる沈丁花花どきすみて瓶に散り初む
                                                       岡田 満子

寸  評

    沈丁花は春を先がけて咲く花。作者は投げ入れにして活けた。
床の辺りには、芳香が漂います。花は内側は白く可愛い小花です。
作者は豊かな気持ちで眺めている様子が浮かんで来ます。


   

今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・