耕養庵蒼島短歌 平成二十一年七月分 入選作品




 拗ねてゐる童女のごとく横むきで咲くアマリリス薄紅に

                       

寸 評

   アマリリスはヒガンバナ科花茎の頂部にラッパ状の花をつける。
   花は上や横を向かず横を向いて開く。それを拗ねている童女の様だと詠った所が
作者の発見で面白い。



 雑談で話したる事五日目に捩れこじれてわれに戻りぬ

                                   

寸 評

   こんなことがよくありますね。井戸端会議を風刺した感じが致します。
それとなくそしられた作者は短歌を詠んでうっ憤を晴らしている所が
それをいわずに読みとれます




 野辺に咲くあまた刺もつ野あざみは紫あわき憂ひを秘むる   
           
  寸 評

   野あざみは、野にありてこそ心惹かれる花です。
日本人は誰もが紫に寄りゆく心を持っています。
それを「憂いを秘むる」と言った所に作者の発見がある。
  

  

桜散る梅はこぼれる椿落つ牡丹崩れることばの風情 
           
  寸 評

   日本語は難しいですね。同じことを言うにも、時と場合、物によって言い方が全然ちがう。
併し、これが妙。日本語は不思議なまでに美しく優れている、この事に作者は気づいています。
さすが歌を詠まれるだけあり、ことばに敏感です。

  

  

飛び出せし豌豆一つ見つけたり漸く末孫帰へりし気配 
           
  寸 評

   「漸く末孫帰へりし」この漸くで、作者はお孫さんの帰りを今か今かと気づかって
待っていることが読者に伝わってきます。そこになかった豌豆がころがっている。多分お孫さんが
むいてくれたのでしょう。孫を思うおばあちゃんの気持ちが伝わってきます。




今回もたくさんのご応募ありがとうございます。
耕養庵では引き続き皆様の素敵な作品を募集しております。


美しい若狭を守り伝えたい・・・・・・