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 絵本「ふるさとの絵ばなし」より

 
深谷のシイ
〈ふるさとの昔ばなし〉


   むかし、深谷村(小浜市深野)にシイという男が住んでいました。


体は椎の実のように小さかったが、
無類の力持ちで、
深谷のシイと呼ばれていました。



 ある時、大きな牛をつれてシイが橋を渡っていると、
向側から殿様の行列がやってきました。
前へ進むことも後へさがることもできません。


 「ちょっとごめんよ」と、
周りの人に声をかけると、
シイは牛の両足をわしづかみにして、
橋のらんかんの外へつき出し、
無事、殿様を通すことができました。


 殿様はその怪力におどろき、
「名前は何という」とたずねました。
 「深谷のシイといいます」と答えると、
殿様は「ほうびをやろう。
何かほしいものはないか」と聞きました。



 「お餅を腹いっぱいたべたい」というと、
「よし、たべさせてやろう。お城へ来なさい」と、
殿様がいいました。





 お城へ出向いたシイは、
腹いっぱい餅をごちそうになりました。


ところが帰り道、
腹ごなしにと
道ばたに用意しておいた大根が一本もありません。
胃の消化を助けてくれる大根がなくなって、
おなかをこわしたシイは、
それがもとでなくなったといいます。





シイの怪力を伝える話に、
谷田部坂の頂上にある腰掛け石は
「シイの赤石」といわれ、
シイが頂上まで負ってあがった石だといわれています。
                                      

             若狭文学会会員       四方吉郎




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